※20220825~20220827後立山連峰縦走(八峰キレット)
月初めになかなか達成感のある山行をこなし、余韻に浸ってダラダラ過ごしていましたが、流石に感動も薄れてきましたので、そろそろまた充電しに行かなければ、、、
ということでまた楽しく縦走できそうな場所を探してみましたら、ありました。
「八峰キレット」
鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間に位置し、日本三大キレットに数えられる難所。去年の「不帰キレット」、月初の「大キレット」と歩いてきた私ですが、いよいよ最後の総仕上げです。
私の当初の予定では三大キレットを制覇してジャンダルムに挑戦しようと思っていましたが、順番はグチャグチャになってしまっています。でもまあ予定なんてものはその通りにいかないからこそ面白いもので、とにかく1つの区切りを迎えられそうだということは確かです。
アプローチは南北どちらから行こうかなと考えましたが、今回は南から北上するルートを行くことに。
ではでは早速行ってみましょう。
今回の行程はこんな感じ。
<1日目>
山形から扇沢に移動
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柏原新道で種池山荘へ
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種池山荘から爺ヶ岳へ
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爺ヶ岳から冷池山荘へ
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冷池山荘にテント泊
<2日目>
冷池山荘から布引山へ
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布引山から鹿島槍ヶ岳へ
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五竜山荘にテント泊
<3日目>
五竜山荘から遠見尾根でエイブル白馬五竜スキー場へ下山
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バスで扇沢へ移動
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扇沢から山形に移動
過去の北アルプスの記事はこちらからどうぞ。
- コンディション不良(扇沢→種池山荘)
- 映えるピザ小屋(種池山荘→爺ヶ岳)
- 悪天候のご褒美(爺ヶ岳→冷池山荘)
- 霧中で進む(冷池山荘→鹿島槍ヶ岳)
- 肩透かしキレット(鹿島槍ヶ岳→八峰キレット→キレット小屋)
- 実はここからが核心説(キレット小屋→五竜岳)
- 丸くなるな、星になれ(五竜岳→五竜山荘)
- 雨より速く(五竜山荘→白馬五竜エイブルスキー場)
- 文明最高(白馬五竜エイブルスキー場→扇沢)
- まとめ
コンディション不良(扇沢→種池山荘)
長いドライブを経て大町市内の「鹿ジビエと手作り定食カイザー」で明日からの英気を養います。この店は2年前に剣沢で散々な目に遭った山行の前日も来ました。
明日からの山行に若干の不安が芽生えましたが、まあ大丈夫でしょう。(明日の天気予報は夕方に雨、、、)
夜中にドン引きするレベルの豪雨に襲われ、「もしかしたら明日は登れないかな」なんてことを車中で考えていましたが、朝を迎えてみると何とか雨は上がってくれました。
6:45 ということで出発です。
今日は冷池山荘までで、コースタイムはそこまで長くないので遅めのスタート。
登山届はコンパスで出しました。
スタートから暫くは、単調な登りが続いての退屈+前夜の雨による高温多湿+寝不足であまりコンディションが思わしくなく、整備が行き届いて歩きやすい道のはずなのにゾンビと化してしまいました。
八ッ見ベンチ。ここで休憩していたら、これから出てくる全てのチェックポイント的な場所で座り込むことになりそうなのでスルー。
滑落注意箇所。
丁寧な看板もあり、注意すればなんてことはない場所。
ガスはかなり下の方に溜まっていたようで、少し標高を上げただけで遠くまで見えるようになって心身が軽くなったような気がします。
水平道。
若干登りだったので景品表示法案件だと思いました。
そこまで急な登りを登った記憶はありませんが、木々の高さを見ると、徐々に標高を稼げているようです。
気付けばガスはあんなに下。
進行方向には沢を横切る場所が出てきました。
大雨の時は通過に苦慮しそう。
振り返るとこんな感じ。本当に少しずつ標高を上げているのが分かるでしょうか。
昨夜の雨のような中での通過にならずに良かったです。
種池山荘が近づいてくると等高線と垂直に交わる時間が長くなってきます。ただ、序盤よりも足が前に出るのは、体調が少しずつ回復してきているからでしょうか。
お、あのトンガリ屋根は山荘ですね。思ったよりも長く感じましたが、ようやく一息つけそうです。
映えるピザ小屋(種池山荘→爺ヶ岳)
9:30 種池山荘に到着。
ピザが有名な小屋ですが、まだこの時間は販売されていないとのこと。販売まで待つか、諦めて先に進むか、心底悩みましたが後者を選択。
小屋の前で少し休憩してからリスタートします。先に見えているのが爺ヶ岳でしょうか。
種池山荘から爺ヶ岳までは1時間ほど。
下界に近いところを漂っていたガスはいつの間にか見上げる高さまで上がり、特に稜線の北側は完全に白い世界となっています。
少し進んだところで種池山荘を振り返ります。屋根の赤が映えますね。
爺ヶ岳までの道も、これまでの道と同様、整備が行き届いていて危険個所はありません。整備してくださる方々には本当に頭が下がります。ありがとうございます。
足元の石が大きくなってきました。先を見上げると登りはそろそろ終わりそう。
ということはそろそろ山頂ですね。
悪天候のご褒美(爺ヶ岳→冷池山荘)
10:20 爺ヶ岳南峰に登頂。
爺ヶ岳は南、中、北の3つのピークで形成されています。
今日は爺ヶ岳が唯一のピーク。
そこまでハードな行程ではないものの、もう登らなくていいというのは気が楽になりますよね。
三角点タッチも忘れずに。
続いて爺ヶ岳中峰(2,699m)登頂。
中峰に着いた頃から完全にガスに飲まれました。
景色が見られないのは残念ですが、こんな天気の時は雷鳥が出てきてくれる確率が高いのでそれはそれで楽しみです。
因みに北峰は登山道が通っていないのか、いつの間にかトラバースするように歩いており、気付くと通過してしまいました。
ほらほら。
やっぱり出てきてくれました。可愛いですね。
こっちは凛々しい。
雷鳥探しを楽しみながら歩いているといつの間にか前方に目的地である冷池山荘が見えてきました。
テント場は山荘のやや上、木々が剥げている場所のようです。トイレや買い出しにはやや不便そう。
まあそんなことを言っても、ビバークする状況にでもならない限り、あそこしかテントを張れる場所はないので、とりあえず進みましょう。
冷乗越まで下りてきたらもう山荘までは間もなくです。
11:45 冷池山荘に到着。
テント場利用の手続きをします。
テント場まで15分。
やはり遠い。でもそれだけ静かな時間を過ごせると思えば必ずしも悪いとも言い切れません。
テント場に到着し、テントを張りました。(写真奥)
テントを張って暫くすると雨が降ってきました。予報よりやや早まったようです。
小屋も遠いし、写真も撮れないのでテント内でまったり過ごします。
雨が止まいので、食事をとって寝ます。
明日は今回の縦走のメイン、鹿島槍からのキレットです。噂によると、その後の五竜への登りもなかなか厳しい行程とのことなので、覚悟して臨みたいと思います。
それではおやすみなさい。
霧中で進む(冷池山荘→鹿島槍ヶ岳)
おはようございます。
まだ日が昇る前、4:15にテント場を出発し、4:45に布引山に到着。
周囲はガスに巻かれて真っ白、足元も昨日の雨で泥濘んでいてなかなかリズムに乗れません。
東の空が明るくなってきたころには、もう山頂の直下。空気中に漂うガスによって全身が濡れています。
5:30 鹿島槍ヶ岳(南峰)(2,889m)に登頂。
景色はないので少し休憩したら先に進みます。
鹿島槍ヶ岳の南峰と北峰の間は吊尾根と呼ばれる区間で、一部岩を乗り越えたりする場所があるので要注意。
ここでも雷鳥が背中を押してくれます。
あれが北峰のようです。
北峰は縦走路から外れているようですが、せっかくなので登りましょう。
北峰への登りと縦走路の分かれ道。
ここから5分ほど登ると山頂です。
肩透かしキレット(鹿島槍ヶ岳→八峰キレット→キレット小屋)
6:15 鹿島槍ヶ岳(北峰)(2,842m)登頂。
こちらも残念ながらガスの中なので、表情も晴れません。
縦走路に戻り、先に進みます。
ここから250~300mほど一気に下るようです。
ここで嬉しいことに、風がガスを一気に吹き飛ばしてくれました。
息を呑む絶景。
今日は奥に見える五竜までこの稜線を歩きます。期待と不安で胸がいっぱい。
雲海もこの素晴らしい情景には欠かせない仕事をしています。
鹿島槍ヶ岳から下ってきた道。滑ったら人生からログアウトしていまいそうな場所でした。
下りは登りよりも難易度が高く、事故が起きやすいのも納得。この下りも落石や滑落に気を付けながら、神経を使って歩きました。
ここからも暫く下りが続きますが、さっきまでよりは手足をかける場所が多く、気は楽です。
いやーしかし、やっぱり山歩きは晴れに限りますね。精神衛生上よろしい。
これは天気が良くなって楽しくなった私。
左を見ると、奥に剱岳が見えます。(たぶん)
ギザギザしていてあっちも楽しそうです。
こうして見ると、そろそろ下り終わりそう。ということは、キレットも間もなく?
写真のように細い場所が多いので注意して進みます。
ここは乾いていたので難なく通過しましたが、濡れていたらいやらしい場所になっていたかも。
しかし、素晴らしい雲海です。雲海オブザイヤーですね。
五竜には近づいているはずですが、近づけば近づくほど標高を落としているので、なんだかどんどん遠くに見えてきました、、、
と、目の前に見覚えのある景色が。
これは八峰キレットを調べた時に何度も見た光景。ということはここがキレットのようです。
そういわれると、確かに進行方向左側は切れ落ちていて危ない。
ただ思ったよりも足場もしっかりしていて、鎖や梯子が整備されていて、正直大したことないなという印象。
なんだか肩透かしを食らった気分。
核心部を終えてからも鎖場が続きますが、慎重に進めば問題ありません。
キレット小屋まではもう少しのはず。そこまで行ったら休憩しましょう。
五竜岳。やっぱり遠くなっている気がする。
五竜岳の前、行く手を阻むように何個もピークが見えます。あれを全て乗り越えなければ、今日の寝床には辿り着けません。先は長い。
五竜に気を取られながら歩いていると、足元に小屋が出現。
実はここからが核心説(キレット小屋→五竜岳)
7:45 キレット小屋に到着。
僻地にこんな立派な小屋があるとは、驚かされました。
去年、白馬から爺ヶ岳まで後立山を縦走する予定で、ここに宿泊する予定で予約していたのですが、あまりの荷物の重さに五竜で力尽きて下山し、宿泊もキャンセルしたことがありました。小屋の方には大変な迷惑をかけてしまって反省しています。あれは完全に缶ビールを大量にザックに詰め込んでいたことが要因で、それからは酒を山に持参することはなくなりました。酒はなくても山は楽しいです。
ここから五竜岳へはコースタイムで4時間ほど。休憩を入れても昼過ぎには辿り着けるでしょうか。
先はまだ長いのでぼちぼちリスタート。
また雲が増えてきましたが、青空も見えています。
険しいとまでは言いませんが、手を使う岩場が頻繁に出てくるので、全身運動で徐々に体力が削られます。
暫くするとひたすら太腿を刺激し続ける長い登りが出てきました。
ここに来てこの登りはなかなかのSっ気を感じます。
まだ距離がある中で気付いてしまったのですが、五竜直下から山頂までの登りエグくないですか。最後にあれを登る体力を残しておかないといけないとは、、、
振り返ると鹿島槍からここまでの歩いてきた道が見えました。
こうして見ると、鹿島槍からの下りもなかなかのものです。
今私がいる場所、どっちに進んでも絶望的な登りを越えないと脱出できないんですね。いつの間にか逃げ場を失っていました。
9:25 北尾根の頭に到着。ちょっと休憩。
体力的に結構きついっす。でもきつい中で自然と対峙する山はやっぱり楽しいです。
と思えているということはまだ精神的には余裕があるようですね。
岩だけでなく、ザレているような場所もあります。意外とこういうところで足の置き場を誤って事故になったりするので気は抜けません。
あとは手前のピークをこなして、最後の登りです。
もう少し、頑張ろう。
手前のピークはG5という場所だったみたい。事前に調べた時にも何度か見た名称です。確かに険しい岩場でした。
G5を通過して最後の登り。あれだけ遠くから見ていた五竜岳も、残すところあと数百メートルです。歩いていればいつかは着くものですね。
最後の登りは心拍数がかなり上がって厳しいです。何度も振り返って歩いてきた稜線からの応援を求めてしまいます。
キレットよりも、キレット通過後の行程の方がかなりきつい。核心はこっちだったようです。
そんなこんなで何とか急登を登り切りました。疲れた。
ここから山頂までは標高差ほぼゼロで縦走路を外れます。
丸くなるな、星になれ(五竜岳→五竜山荘)
11:15 五竜岳(2,814m)無事登頂しました。
2年連続2回目(甲子園)の登頂。去年は快晴でしたが今年は真っ白。それでも達成感はひとしおです。
長いようで短い、短いようで長い、そんな山行でした。何言っているか自分でもわからないですが、とりあえず楽しかったです。
五竜山荘までもよく事故が起きている場所なので慎重に。
12:25 五竜山荘に到着。思ったより早く着きました。
キレット小屋では「酒はなくても山は楽しい」などとほざいていた私ではありますが、小屋に売っているのを見つけた次の瞬間、小屋の前のベンチに缶を持って陣取っていました(金は払いました)。
丸くなるな、星になれ。
唐松岳も見えています。
明日、唐松経由で下山してもいいな。天気予報次第ですね。
楽しい2日目も綺麗な夕焼けとともに終了です。
明日は下山。寂しいですが下界も恋しい。複雑なこの感情は乙女心のようなものでしょうか。(いいえ、違います)
黙ります。おやすみなさい。
雨より速く(五竜山荘→白馬五竜エイブルスキー場)
おはようございます。3日目の朝です。夜はガスに包まれていましたが、今は五竜もはっきり見えています。
と思ったら山頂はガスに包まれました。
天気予報は昼過ぎから雨が降るみたい。雷の可能性もあるみたいなので、今回は唐松岳には寄らず、遠見尾根で下山することにします。
写真中央はテントを張っていた場所です。快眠できました。
そろそろ太陽が雲海から顔を出しそう。
出ました。希望の朝です。
あたたかい光が遠見尾根を照らし始めました。
御来光を眺めたところで、天気が崩れる前に下山しましょう。
5:30 下山開始。
唐松方面は既に雲に包まれつつあります。唐松岳も好きな山だから行きたいですが、天気が悪いのが分かっていると気分が乗りません。
遠見尾根は去年も下りで通りましたが、かなり長かった印象。覚悟して進みます。
本格的な下山の前に、白岳(2,541m)に登頂。遠見尾根の最高点です。
雲と太陽が争って、幻想的な光景が広がっています。
白岳を過ぎると本格的に下り出します。
白岳から西遠見山まではかなり傾斜がきつい区間。下りは膝に来るのでここはゆっくり自分のペースを作ることに集中。
五竜山荘、五竜岳方面を振り返ります。分厚い雲に太陽が遮られていることもあり、かなり暗いです。
下界が見えました。
あそこまで下るのか。遠いなー。
滑る岩場に注意しながらどんどん標高を落としていきます。
奥にちらっと見える山肌はおそらく鹿島槍ヶ岳。
ここまで来ると五竜山荘が米粒サイズになってしまいました。忘れ物があっても引き返したくないほどの登りです。
ガスのおかげでこんな幻想的な光景に出会えました。
6:15 西遠見山に到着。
少し開けた場所なので休憩しやすいですが、天気が崩れるというタイムリミットがある私は先を急ぎます。
と、西遠見山を通過しようと思ったら、、、
鹿島槍ヶ岳の双耳が見えました。そしてキレットに向かう激下りもこの通りばっちり。
自分のことながら、よくあんなところを歩いたものです。
もう少し進んだところからは鹿島槍ヶ岳の全体が見えました。
次はピーカンの時に登りたいですね。
こちらは唐松岳方面。雲が多いですが、今のところ稜線上は雲がなく、雲海を楽しめそう。
あれ、こんな感じならあっちから下山しても良かったかな。
五竜と唐松。去年の縦走が昨日のことのように思い出されます。
6:40 大遠見山?に到着。
雲は多いですが、雨が降るのはもしかして下界だけ?と思うほど雲が低いです。
奥の白い山は白馬鑓ヶ岳かな。
7:00 中遠見山に到着。
ここまで下山すると、稜線への未練は断ち切られ、一秒でも早く下界に降り立ちたい欲望が沸いてきます。
7:20 小遠見山に到着。
五竜のこの圧倒的な存在感。かっこよすぎます。
鹿島槍ヶ岳はここから見ると双耳峰に見えませんね。
こうして見ると何てことない登りに見えますが、五竜岳へのあの最後の登りはきつかったなー。
小遠見山からはハイキングコースとして木道や階段が整備されていて、一気に人工物が増え、帰ってきた感があります。
結局、雨は最後まで降りませんでしたし、予報も変わって曇りになったようです。
お疲れ様でした。
文明最高(白馬五竜エイブルスキー場→扇沢)
ここからゴンドラで下界にワープ。
スキー場から扇沢まではバスで移動します。
文明の利器を活用しまくった移動ですね。冷房最高。動力最高。文明最高。
あっという間に扇沢に帰ってきました。
この後はいつものように車でダラダラ山形に還りました。
まとめ
去年、白馬から歩いて五竜で力尽きたので歩けなかった五竜~爺を、進行方向は逆になりましたが歩けたので、残していた課題を回収できた気分です。荷物を減らして歩いたこともあり、今回は下山後もまだ余裕があり、少しは成長しているのかなと安心しました。
今回の山行で無事に日本三大キレットを全て歩けたことになりました。
私個人の感想としては難易度は「八峰<不帰<大」といった感じ。まああくまでも個人的な感覚なので、気になる方は万全の準備をした上で、自分で歩いてみることをおすすめします。
岩場好きとしては、まずは一定の目標を達成した感触がありますが、まだまだ楽しそうな岩場はそこら中にあるでしょうし、岩場でなくても、長い縦走や景色が綺麗な場所など、行ってみたい場所は無数にあるので、これからも機会を捉えて出掛けたいと思います。
ではではまた山に行ったら更新します。