※20210506~20210507燕岳・北燕岳
月が替わり5月になりました。ゴールデンウィーク中は天候に恵まれなかったり、予定があったりしてなかなか山に時間を割けず、終盤に得意の有給を駆使してようやく行ってきました。
選んだ山は「燕岳」。北アルプスに位置し、老若男女問わず大人気の山で、その登りやすさからか、アルプスデビューに使われることも多いそうです。何を隠そう、この私も北アルプスデビューで登った山もこの山でした。(まだブログを始めていない頃です。懐かしいなー)
しかし、登りやすいと言ってもそれは夏山の話。積雪があれば、当たり前ですが難易度は少し増すので入山者はぐっと少なくなり、夏には考えられないほど静かな燕岳を楽しめるとのこと。また、夏はその人気によって予約がすぐに埋まってしまう燕山荘もこの時期なら比較的容易に予約できるらしい。
これは行くしかない!ということで、遠方遥々行って参りました。
ではでは早速行ってみましょう。
※燕岳:飛騨山脈(北アルプス)にある標高2,763mの山で、日本二百名山に選出されています。中房温泉(長野県安曇野市)から合戦尾根を登るルートがメジャーで「アルプス初心者の入門の山」として紹介されることが多いです。よく整備された合戦尾根は確かに登りやすいですが、北アルプス三大急登に数えられているので油断は禁物。花崗岩で出来た特徴ある山容が美しく、北アルプスの女王を呼ばれています。また、燕岳は大天井岳、そして槍ヶ岳(or常念岳)へと歩いていく表銀座縦走の起点となる山で、多くの登山者で賑わう活気のある山です。
<行程>
中房温泉→合戦小屋→燕山荘→燕岳・北燕岳(燕山荘に宿泊)※帰りはピストン
過去の北アルプスの記事はこちらからどうぞ。
- 背中の異音(中房温泉→合戦小屋)
- いざ、天国へ(合戦小屋→燕山荘)
- ピークハント(燕山荘→燕岳・北燕岳)
- 山とビール(燕山荘及びその周辺①)
- 贅沢な時間(燕山荘及びその周辺②)
- 後ろ髪を引かれる(下山)
- まとめ
背中の異音(中房温泉→合戦小屋)
前日、1人車を走らせ、山形から中房温泉まで移動し、駐車場で車中泊しました。天気予報は悪くありませんでしたが、実際の天気が小雨で微妙だったからか、車は少なく、駐車場はがらがらです。(積雪期はこんなものなのでしょうか。夏じゃ考えられない空き具合です。)
因みに、夜中は車の周りに野生動物(恐らく猿です)の気配を常に感じ、トイレに行きたくても怖くて行けずひたすら我慢を強いられた厳しい時間でした。
登山相談所の前を通過します。
これで燕岳は3回目。この辺りの風景も見慣れてきました。
6:00 登山開始。
この看板のすぐ近くにあるトイレで用を足し、準備万端で出発です。
因みに、装備は冬山仕様です。5月ではありますが、北アルプスの稜線上はまだ冬山です。安全のため、行く方はアイゼンはもちろん、ウェアも冬山だと思って準備してください。
行程的に日帰りも可能ですが、今回は燕山荘に泊まるのも楽しみの1つ。泊まりなので特に急ぐ必要はないのですが、前評判通りこの時期は驚くほど人が少なく、自分のペースでサクサク登れてしまいます。
6:20 第一ベンチに到着。
合戦尾根はほぼ等間隔にベンチがあり、休憩の目安に最適です。ただ、夏は大勢が休憩しているのでベンチに座れるかはその時の運次第。
まだ疲れていないのでこのベンチはスルーして先に進みます。
冒頭にも書きましたが、合戦尾根は北アルプス三大急登に数えられていますが、個人的にはそこまで急な印象はありません。もちろん急な箇所がないと言ったら嘘になりますが、木の階段や石のステップが丁度よく配置されているからか、体力を消耗せずに登れるんですよね。
よく整備が行き届いた登山道で、整備してくださっている方々には頭が上がりません。
6:50 第二ベンチに到着。こちらもスルーします。
この辺りから雪が出てきましたが、まだツボ足で行けそうです。(今回は12本アイゼンとピッケルを持ってきています。ピッケルの出番はなさそうですが、「備えあれば患いなし」ということで。)
第二ベンチを過ぎたあたりで小雨が止み、青空が見えてきました。
テンションが上がってきましたが、オーバーペースに気を付けなければ。
そう言えば、この辺りで背中から「シュー」という異音が聞こえたような、、、。が、特に気にも留めずに歩いてしまいまして、あの悲劇に見舞われました。
7:15 第三ベンチに到着。こちらもスルー。
木々の間から青空が顔を出しています。絶好の登山日和。気温も徐々に上がってきていて、薄っすら汗ばんできました。
この辺りは雪が固く、傾斜もそれなりにあったので、滑ってからでは遅いと思いアイゼンを装着することにしました。ザックを下ろし、中を開けてみると、、、
小屋に着いてからのお楽しみセットの主力メンバーである檸檬堂が破裂して、ザック内に爽やかな風味を撒き散らしておりました。確かに今回は三脚やカメラ機材等々をザックにぎゅうぎゅうに詰め込みましたが、まさか缶が破裂するほどの圧力がかかっていようとは、思いもしませんでした。さっき聞こえた異音の原因はこれだったんですね。
幸い、カメラ機材への被害はなかったので、濡れたものをザックに外付けし、乾かしながら登ることに。
アイゼンを装着し、気を取り直して再スタートです。
8:00 富士見ベンチに到着。アイゼンを付けた際(檸檬堂破裂事件の後処理)に少し休んだのでここもスルー。
今回も入れて三度ここを訪れていますが、富士山が見えたことは一度もありません。
富士山は見えずとも、北アルプスらしい風景が見えだしました。
やはり雪があるだけで一段と格好よく見えますね。
見えだした周りの山々に視線を奪われながら歩いているとあっという間に合戦小屋が姿を現しました。
いざ、天国へ(合戦小屋→燕山荘)
8:25 合戦小屋に到着。夏なら目線の高さにある鬼の看板も今回は足元です。5月でもまだまだ雪は残っていますね。
夏なら大変な賑わいを見せている小屋前のベンチも、今日はまだ誰もいません。
奥に見える雲海が綺麗です。
後続の方が来たので、合戦小屋独り占めの権利をお譲りして、私はそろそろ歩き出すことにします。
合戦小屋を過ぎると徐々に木々の背が低くなってきました。
遠くに見えるあの山は大天井岳(2,922m)でしょうか。表銀座縦走の際は大天井岳の右側をトラバースしてしまったので、まだ登ったことがない山です。
大天井岳のテント場は槍ヶ岳や穂高を眺められる最高の場所という評判を聞いたことがあるので、近いうちに行こうと目論んでいます。
噂をすればなんとやら。槍ヶ岳がひょっこり顔を出しました。
一部を見ただけでこの存在感。さすがは北アルプスの盟主、イケメンですね。
2年前の縦走の際の記憶が昨日のことのように蘇ってきます。あの時は初めて30kgの重いザックに苦戦しながらも、非日常の世界に心が躍りました。
合戦小屋までは雪の下の夏道を辿るように登ってきましたが、小屋から上は直登でした。時短にはなりますが脚には結構効きます。
何度も振り返りながらゆっくり進んでいきます。
と言っていると、遠くにあの山の姿が!
富士山です。雲海の中に聳え立つ姿は、さすが日本一の山といった風格を醸し出しています。美しい。
富士山を見つけると誰でもテンションが上がってしまうこの現象、富士山の魅力が日本人の遺伝子に刻み込まれているんでしょうね。
富士山に元気をもらい、疲労した足を前に出します。
8:45 合戦沢の頭に到着。
稜線の先に見えている燕山荘を目指してラストスパートです。
白い雷鳥、見たいなー。
小屋の近くまで来ると、槍ヶ岳の存在感が更に増してきました。
表銀座と槍ヶ岳。そして穂高もはっきりと見えていますね。大好きな山域です。
※当記事、この後、これと同じような写真を量産することとなります。予め御了承ください。
積雪期は小屋の裏から回って入口に向かうようです。
裏銀座の稜線。
私は、燕山荘のテント場の横を通過して燕山荘と燕岳山頂の分岐に到着し、裏銀座の稜線が目に飛び込んでくるあの瞬間がたまらなく好きです。頑張って登ってきた疲れを一気に忘れてしまう感覚。あの瞬間、アルプスに心奪われたのを今でも鮮明に覚えています。
今回は無積雪期のようにテント場の横を通るルートではありませんでしたが、やはり裏銀座が見えると疲れが吹き飛びました。
そのうち、あっちも歩きたいですね。
そして、今回の目的地である燕岳です。
このカッコよさで日本百名山に選ばれていないとは。深田久弥さんのセンスに疑問を抱かざるを得ません。
槍ヶ岳の北鎌尾根。実はあそこも近いうちに挑戦したいなと考えています。山頂の祠の裏から登頂したら、さぞかし気持ち良いことでしょう。
小屋の裏から小屋の正面まで普通に歩けば数十秒程度ですが、目の前の絶景に夢中にシャッターを切っていたら15分くらい経過してしまいました。
ぼちぼち小屋前のベンチで休憩しましょう。
ピークハント(燕山荘→燕岳・北燕岳)
9:45 燕山荘に到着。
収容人数650人と山小屋の中で有数の規模を誇り、燕岳登山者の宿泊地、表銀座縦走者の起点として多くの登山者を支えています。
中には売店や食堂、喫茶室があり、山にいながらケーキやお菓子も楽しめます。私は初めて来た際、小屋前のベンチで特大ジョッキ(確か「メガジョッキ」という呼称だったような)のビールを楽しむという贅沢な時間を過ごしました。
到着してから知ったのですが、今年で開業100周年とのこと。修復、増築を重ねながらではあると思いますが、この厳しい環境の中で100年間営業しているのは大変なことだと思います。小屋があるおかげで安心して山を楽しむことが出来ていることに改めて気付き、頭が下がる思いになりました。有難いですね。
小屋の受付まで、まだだいぶ時間があります。
時間的には日帰りもできる時間なのでどうしようか迷いましたが、折角はるばる山形から来たのに日帰りは勿体ないと思い、予定通り宿泊することにしました。
では、とりあえずピークハントしましょうか。
小屋から山頂まではコースタイムで30分ほど。ほとんど標高差はないのでお気楽に歩き出します。
小屋のすぐ隣にあるテント場はまだ雪が残っており、そこにテントを設営した痕跡が残っています。
今日も天気がいいので、もう少ししたらテント泊組が登ってくるでしょう。
燕岳の名物「イルカ岩」
自然にできたとは思えないほど、しっかりイルカの形です。
10:30 燕岳(2,763m)無事登頂しました。
風が少し強くなり寒くなってきたのでハードシェルを羽織りました。
初めて来た時はここで缶ビールを楽しみました。懐かしいです。
時間があるので少し先まで足を延ばし、北燕岳にも行きました。
北燕岳は燕岳を違って人が少なく、静かな山を楽しめます。小屋から燕岳と同じような平坦な道が続くので、お時間がある方は是非行ってみてください。
今年はリベンジするぞ!
山とビール(燕山荘及びその周辺①)
小屋の受付時間が迫ってきたのでそろそろ戻ります。
早々に受付を済ませ、自分のブース(コロナ対策で、本来2人以上で詰め込まれるブースを1人で悠々と使えました。小屋的には厳しいのでしょうが、こういった面は利用者的には嬉しく感じてしまいます。コロナ後はどのような形がスタンダードになるのでしょうか。)にの荷物を置いて食堂に駆け込みます。
ビールのピントが合っていない点で、私がどれだけ早くこの液体を喉に流し込みたかったを感じてもらえればと思います。(因みに、生ビールもコロナ対策でジョッキでの提供は休止しているとのこと)
そしてビーフシチューセット。ここは本当に山なのでしょうか。最高の贅沢です。
(食堂内はアクリル板の設置や入り口での手指の消毒など、出来る限りの感染対策が施されていました。)
お腹も心も膨れたところで、写真を撮りに散歩に行くことに。
GWは終わらない。 pic.twitter.com/skJeXmAYMl
— daichi (@dai2222222) 2021年5月6日
燕山荘周辺は小屋に宿泊するグループが楽しそうに宴会を開いていて賑やかだったので、私は少し大天井岳方面に進んだところでのんびりすることにしました。
もちろん持参したアルコール類とおつまみも持ってきています。
夏は多くの人が歩いている表銀座も、積雪期は人がまばらで、静かな縦走が楽しめそうです。まあ、雪がついていても歩ききれる体力があることが前提条件にはなりますが、、、。
槍ヶ岳もこの時期は相当少ないんでしょうね。
以前、NHKのドキュメンタリーで写真家の西田省三さんが雪が付いた槍ヶ岳をドローンで撮影した映像が流れていましたが、夏より一層険しく見えました。難易度はかなり上がると思いますが、一度自分の目で見てみたいものです。
表銀座の稜線上をなぞっていくと最初にぶつかるのが大天井岳です。
先程も言いましたが、縦走時、私は1日目になんとしてもヒュッテ西岳にテン泊したく、ある程度ハイペースで進む必要があったのでトラバースしてしまったんですよね。ヒュッテ西岳に着いてみると、意外と時間的に余裕があったので、大天井岳にも寄れば良かったと後悔しました。
そんな思い出に浸りながら、持ってきたアルコール類とおつまみで独り宴会スタートです。
時間はたっぷりあるので、岩陰に入って風を凌ぎながらゆっくり過ごします。
どこまでも続く稜線。この絶景であれば、本当にいつまでもどこまでも歩いて行けそうな気持ちになります。
小屋の夜ご飯のスタートは早いので、小屋に戻ってきました。
今日のメニューはハンバーグと焼き魚。ごはんとみそ汁はお替わり自由です。前日が5/5こどもの日だったので、デザートに柏餅まで付きました。(食べ過ぎました)
贅沢な時間(燕山荘及びその周辺②)
食事を済ませ、再び外に出ました。
太陽が沈み始め、山が淡い光に包まれています。
派手に焼けてはいませんが、これもこれで味があって悪くないですね。
富士山はさすがの存在感です。
立山方面が赤く染まってきたのでカメラを向けます。
写真では伝えられないですが、徐々に風が強くなってきて、どんどん体が冷えてきました。
どこか怪しさを感じる赤です。
このまま外にいると風邪を引いてしまいそうなので、小屋に入ってぬくぬくすることに。
と、少し暖をとるつもりが、いつの間にか寝てしまいました。気付いていないだけで、疲れていたのでしょうか。
目が覚めたのが深夜2時。雲が出ていなければ星が見えるでは?と寝ぼけ眼で小屋の外に出てみると、満点の星空が広がっていました。
※暗いレンズしか持っておらず、綺麗さを写真で表現できていないのが歯痒いです。
気温も低く、風も強かったので、体感温度はかなり低かったはずですが、夢中で空を見上げていたからか、不思議と寒さは感じませんでした。
結局、2時に外を出てから太陽が上がって来るまで、外で空を眺めていました。贅沢な時間です。
折角、ずっと外にいたのに、この日の太陽は雲の裏に上がったため、御来光を拝むことはできませんでした。少し残念。
安曇野市街地も少しずつ明るくなってきました。
今日も堂々と鎮座する槍様。
朝ごはんの時間が迫ってきました。
大天井岳方面に歩き出したくなる気持ちをぐっと堪えて中に入ります。
朝ごはんもご飯と味噌汁のお替わりが自由でした。(食べ過ぎました)
後ろ髪を引かれる(下山)
6:15 下山開始。
今日は中房温泉に下山するだけの余裕のある行程ですが、睡眠時間は間違いなく不足しているので、集中力を切らさないよう、慎重に歩くことにしましょう。
「アルプスの女王」
その名に相応しい美しさです。
雪が付いた表銀座は本当に私の心を誘惑してきます。難易度は格段に上がるでしょうが、いつか歩いてみたいです。
これは笠ヶ岳?
噂によると、笠新道が鬼のようなキツさだとか。確かめに行かなければ。
絶景に足が止まり、まだ小屋から50mも進んでいません。
このペースで行くと、駐車場に着く頃には夜になってしまいそうです。そろそろ山々に別れを告げなければ。
また来ます!
富士山もこれで見納め。
南アルプスからであればもっと大きな富士山を楽しめるでしょうね。まだ未踏である南アルプスへの挑戦意欲が出てきた今日この頃です。
槍様が後ろ髪を引いてきます。(短髪で襟足は刈り上げていることは内緒です。)
合戦小屋に到着。昨日の方が天気は良かったですね。
いいタイミングで登れたようです。
合戦小屋を過ぎると特に気を惹かれる景色もなかったので、ノンストップで歩きました。
8:00 下山完了。
中房温泉には誰もいませんでした。そう言えば下山中にすれ違ったのは数名程度。夏では考えられないほどの静かな合戦尾根でした。
何故か、中房温泉から駐車場までのアスファルト歩きが今回の山行で一番足にきました。疲れが出たのでしょうか、この5分で一気に疲労感が増しました。
無事、駐車場に着きました。
お疲れ様でした。
まとめ
今回は私のアルプスデビューの燕岳に再訪してきました。あの時には、雪がある季節に登るとは全く思っていませんでした。数年の時間の経過の中で、更に山に魅せられたということですね。
自分の成長が嬉しくなった一方、もっと技術・体力向上のために努力して、自分が行きたいと思った山に行ける自分でありたいと強く思いました。
ではではまた山に行ったら更新します。