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アウトドアが好きで健康診断が苦手な山形県民の記録用ブログ

【不帰】3日で7kg減はワールドクラス?(後立山連峰縦走※白馬~五竜)

※20210719~20210721後立山連峰縦走(白馬~五竜

 

初めての冬靴を買った1年半前、登山用品店の店員さんから言われてずっと心に残っていた言葉があります。

「白馬はワールドクラス」

世界の名峰と肩を並べるほど素晴らしい景色を楽しめるとのこと。その店員さんはマッターホルンモンブランを踏破したすごい経歴をお持ちの方なのですが、その方がそんなことを言うということは余程魅力的な場所なのだろうと、訪れるチャンスを今か今かとうかがって過ごしてきました。

 

そして、遂にその時が。

土日と祝日の間を有休で埋め、9連休を作り出しました。これで天候不良やアクシデントで停滞しても問題ありません。急いで具体的な行程の計画を立て、いざワールドクラスへ出発です。

 

個人的には2回目の後立山。初めてはギリギリ厳冬期の日帰り唐松岳でした。冬山を始めて2ヶ月、ヘロヘロになりながら登頂したのを覚えています。今回はどんな山行になるのでしょうか。

 

今回は猿倉から白馬大雪渓を通って白馬岳へ登り、ここでテント泊。翌日、杓子岳と白馬鑓ヶ岳を越えて、不帰キレットを通って唐松岳へ。行けたら五竜岳まで行きたいのですが、おそらくテント泊装備でスピードは期待できないので、唐松岳でもう1泊。明朝、五竜岳まで歩き、その時の残りの体力で、①遠見尾根で下りるor②キレット小屋まで行って宿泊し、八峰キレットを通って鹿島槍ヶ岳爺ヶ岳に登って扇沢に下りる、の2択から最善の行程を選択しようと思います。(タイトルを見ればどの選択をしたのか一目瞭然ですが、、、。)

 

久しぶりに私の好きな(得意とは言っていない)岩場が多い山行になりそうで、気分が高揚気味ですが、落ち着かないと事故に繋がりかねないので冷静になるよう努めます。

 

昨年、Kさん(いつも出てくるKとは違う方です)に誘われて、暫く行くつもりがなかった国内最難関のジャンダルムに登りましたが、それ以前は国内三大キレットを踏破してからジャンダルムに登ろうと思っていました。

キレット:漢字で「切戸」と書き、山と山を繋ぐ尾根が深く切り落ちている場所のこと。長野県の方言からきた言葉と言われていて、富山県では「窓」と呼ばれることもある。

 

未だ1つも踏破していないキレット

最も有名な「大キレット」は槍ヶ岳穂高を結んだ場所(正確には南岳と北穂高岳の間)にあり、こちらは来年あたり、Kさんと一緒に行く計画を立てています。

そして、五竜岳鹿島槍ヶ岳の間の「八峰キレット」。私がよく見ているYouTuberの方が数年前に縦走しているのを見て、とても魅力的に感じています。

最後が今回歩く「不帰キレット」。白馬鑓ヶ岳の南側の天狗ノ頭と唐松岳の間にあり、「不帰ノ嶮」と呼ばれることも。(文字からして何だか恐ろしい場所のような印象ですよね。私は無事に帰って来られるのでしょうか。)以前、冬の唐松岳に登った際、八方尾根を歩きながら右(北)を見た時に目に入った、やけにギザギザしているなと思った場所が不帰キレットだったようです。本当は昨年歩くつもりだったのですが、なんやかんやでタイミングを逃し、今年の挑戦となりました。

岩山好きと自称している以上、キレットは是非とも制覇しておきたいところ。無理は禁物ですが、挑戦しなければ成功はありません。頑張ります!

 

 

ではでは早速行ってみましょう。

 

 

 

<行程>

1日目:八方バスターミナル→猿倉荘→白馬尻小屋→大雪渓→村営頂上宿舎→白馬山荘→白馬岳→村営頂上宿舎

2日目:村営頂上宿舎→杓子岳→白馬鑓ヶ岳→天狗山荘→天狗ノ頭→天狗ノ大下り→不帰キレット唐松岳→頂上山荘

3日目:頂上山荘→牛首→大黒岳→五竜山荘→五竜岳五竜山荘→白岳→西遠見山→大遠見山→中遠見山→小遠見山→アルプス平駅→遠見駅→神城駅→白馬駅→八方バスターミナル

 

 

 

過去の北アルプスの記事はこちらからどうぞ。

daic22.hatenablog.com

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daic22.hatenablog.com

daic22.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロングドライブ(山形→八方※0/3日目)

 

まずは山形から八方まで遥々一人旅です。今日は移動だけで、特にどこかに寄ったりする予定はないのでのんびり運転していきます。(写真はドライブ中のお口のお供です)

 

 

いい天気です。明日からの山行も晴れ予報。これくらいの快晴だといいですね。

特に岩場での雨は危険度が増すのでやめてほしいなー。

 

 

八方に着きました。ここ数年、何度か長野まで運転してきているので、あまり遠い場所に来たという感覚はなくなってしまっていますね。

バスターミナル周辺には無料駐車場が何ヶ所かあり、ハイシーズンでも全部が埋まってしまうなんてことはないようです。ちょっと心配していましたが一安心。

今日は近くのコンビニで夜と翌朝分のごはんを買い、車中で朝まで過ごします。人によっては車中泊ではなかなか寝付けない人もいると聞きますが、幸い私はいつでもどこでも寝られる特殊能力があるので問題ありません。

 

 

駐車場で休憩中のタクシーのおじちゃんから話しかけられたのですが、元ばりばりの山屋だったらしく、後立山の魅力をたっぷり教えてもらいました。

 

明日の今頃はあの稜線上にいるんだなー、なんてことをぼんやり考えていたらいつの間にか寝てしまっていました。

 

 

 

八方に生きる(八方→猿倉※1/3日目)

 

おはようございます。予報通り抜群の天気です。

ただ夏は午後になると雲が湧いてくるので、油断せずになるべく早く稜線まで上がってしまいましょう。

 

 

5:30 バスターミナルには既に登山者の姿がありました。6時出発ですが、バスに乗れないなんて事態だけは避けたいなと思い、一番乗りのつもりで来ましたが、同じ考えの人が結構いるようです。(さすがに乗れない事態にはならずに済みそう)

 

 

「八方に生きる」by石原慎太郎

石原さんと八方にどのような関係があるのか石碑の台座の文字を読もうと思ったのですが、バスターミナルに続々と人が来たので、抜かれたくない私は列に戻りました。

 

 

これから向かう白馬三山(のはず)。

右から白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳。今日は白馬岳に登頂予定です。

 

 

バスが来ました。ここから猿倉まで950円。左右の窓が少しずつ空いていて、密が避けられています。

 

いよいよ始まります!

 

 

 

林道を進む(猿倉→大雪渓※1/3日目)

 

6:20 猿倉に到着。ここで皆さんは登山届を記入し始めました。私は事前に「コンパス」というWebサービスで提出済みなので、トイレ等々、出発に向けて他の準備を進めます。

 

 

6:40 登山開始。

今回のザックは約25kg(テント泊装備+大量のビール)。その重さにより、ここに来るまでの過程で既に疲労感が。大丈夫かおれ、、、。

 

 

まずは林道歩き。ランクルが通れるほどの幅ですからだいぶ歩きやすいです。

 

 

時折、遠くに見える稜線に期待と不安を膨らませつつ、暫く歩いていくと奥に雪渓が見えてきました。

あれが大雪渓でしょうか?

 

 

7:30 白馬尻小屋に到着。と言いたいところですが、小屋はどこにもありません。

それもそのはず。元々、この小屋は立地的に雪崩が多い場所なので、毎年5月に建てて10月に解体することとなっているのですが、今年はコロナの影響で営業しないことが決定しています。よって、小屋はなく、広く平らな場所が生まれています。

 

 

ここから大雪渓までは数分で着くようです。

いよいよ日本三大雪渓に取りつきます。どんな景色なんでしょう。どんな難易度なんでしょう。どれくらい大変なんでしょう。

そして、飯豊の石転び沢とどちらが厳しい道なんでしょう。もし石転び沢のほうが上なら、私が勝手に日本三大雪渓に石転び沢を加えることとします。(自分で言っておいてなんですが、何をもって上と判断するのかは難しいですけどね。)

 

とりあえず無事に通過できますように。これが一番です。

 

 

 

絶景の大雪渓(大雪渓※1/3日目)

 

7:50 白馬尻小屋から雪渓のすぐ横まで移動し、ここでアイゼンを装着。

計画段階で色々なサイトで調べると「チェーンスパイクで事足りる」との意見が半数くらいありましたが、それで危険を感じるのは嫌ですし、万が一のことがあると周りの方にも迷惑が掛かるので、念のため12本アイゼンを持参しました。

 

 

雪渓に乗ると冷たい風が吹き下ろしてきます。天然のクーラーです。これはありがたい。火照りそうな体を適度に冷やしてくれます。

さすがは大雪渓といったところで、はっきりとトレースがついているので迷うことはなさそうです。ただ、7月も半ばを過ぎるといくら北アルプスであっても雪は緩み始めているので、歩行には注意が必要です。

 

 

天気予報では快晴のはずですが、ガスに包まれている時間が長いです。そんな中でも時折見える稜線に胸が高鳴ります。

 

 

歩きながら、飯豊の石転び沢と白馬大雪渓のどちらが日本三大雪渓に相応しいのか考えてみました。個人的には体力的には石転び沢の方が厳しいように感じましたが、景色は白馬のほうが好きです。

「こればっかりはその人の好みだなー」なんて、歩かなくても分かるような結論に至りました。

 

 

大雪渓自体はCTで2.5時間ほど。迫力ある景色(と人の多さ)に圧倒されていたらそろそろ終わりそうです。(写真中央の草地まで行くと大雪渓は終了です)

 

 

雪渓にはぱっくりと口を開けている箇所が結構あったので、濃いガスの中を歩かなければいけない状況ではより注意が必要ですね。行く方はお気を付けください。

 

 

 

シャリバテ(大雪渓上部→村営頂上宿舎※1/3日目)

 

9:15 大雪渓を通過。思ったよりもあっという間に終了してしまいました。

感想としては「景色がいい」です。疲れよりもそっちの方が強いので快適に歩けました。

この上にある小雪渓もアイゼンを使う予定ですが、雪がない岩道を暫く登るので一旦アイゼンは外します。

 

 

こちらが小雪渓。雪渓の手前に「距離は短いけどアイゼン着けろ!」的な看板が立っていました。

大雪渓は斜面に対面して登っていくので、後ろを振り返らない限りはそこまで高度感はありませんが、小雪渓はトラバースになるので結構怖いです。

 

 

小雪渓を渡り終えたので、アイゼンは完全に御役御免。あとは小屋までラストスパートです。

ここまで来たらすぐに着くと思っていましたが、地図を確認するとCTで2時間かかるようです。それが判明した途端、急激に疲労感が、、、。

 

 

疲労しているからか、単純に厳しい道なのか、小雪渓から小屋までの尾根はなかなかの急登に感じます。

奥に見える杓子岳がとても遠くに見える。

 

 

そして、ここでなぜ急に疲れが出てきたのかが判明。シャリバテでございます。写っている男性がカロリーメイトを食べているのを見て気付きました。

朝食もコンビニパンのみで、行動食も全く食べずにここまで歩いてきたので、当然と言えば当然。思い返すと、私はちょいちょい同じようなミスを繰り返しているように気がします。反省。(反省はしているつもりで、それでも繰り返しているのでもはや救いようがないような、、、。)

 

 

わさび柿ピーを口に流し込んで小休止。ここのお花畑は見事です。

 

 

元気がある時であれば花には目もくれず素通りしてしまっていたかもしれません。シャリバテも悪いことばかりではなかったですね。(いや、悪い)

 

 

花に癒されて少し回復したので、だらだら進みます。

顔を上げるとだいぶ近くに小屋が見えています。急に現れたように感じていますが、私がただ下を向いて歩いていただけですね。「こんなにいい景色の中、足元だけしか見ていないなんて勿体ない!」と歩き終えた今はそう思いますが、その時はそこまで余裕がなかったんでしょう。

 

 

 

テントを張って(村営頂上宿舎→白馬山荘※1/3日目)

 

11:30 村営頂上宿舎に到着。やっと着いたー。大雪渓よりもその後の方が大変でした。

テント場に行く前にここで受付をしました。(テント場はコロナの影響?で完全予約制です。2,500円)売店兼食堂もあり、確か14時くらいまで営業していたような気がします。(ビールの自動販売機もあります!スーパードライ500ml800円)

 

 

上に見えるのは白馬岳山頂直下にある白馬山荘ですかね。

 

 

頂上宿舎の裏にテント場があります。私も早速設営しました。(写真右の緑のテントです。)

テントは今回の山行から導入したNEMOのTANI。吊り下げ式なので強風時は少し心配ですが、設営のしやすさは抜群です。

 

 

さて、テントにくそ重いザックを放り込んで、ピークハントに向かいます。

空身って素晴らしいですね。走れるくらい体が軽いです。

 

 

左(西)を見るとかっこいい山が鎮座しています。旭岳というらしい。雪と岩のコラボレーションに視線を奪われます。

 

 

頂上宿舎から白馬山荘までは緩やかな斜面が続きます。展望が開けているので飽きずに歩けるので、すぐに山荘まで着きます。

 

 

 

ピークへ(白馬山荘→白馬岳※1/3日目)

 

12:40 白馬山荘に到着。山の上にあるとは思えないほど充実した設備です。

事前の調べではここではジョッキで生ビールが飲めるとのこと。今すぐにでも飲みたいところですが、まずはピークハントを済ませましょう。うーん、早く飲みたい!

 

 

白馬山荘から山頂までは15分ほど。遮るものがない開けた道を歩いていきます。

 

 

やや雲が多いのが気になることですが、山頂に着くことには晴れる、と信じたい。

 

 

あそこが山頂、今日の最高地点です。

 

 

 

ピークハント(白馬岳山頂※1/3日目)

 

13:20 白馬岳(2,932.3m)無事登頂しました。

数年前から来たかった場所なので、素直に嬉しいです。

 

 

山頂の石碑?には沢山の小銭が差し込まれていました。

 

 

山頂で休憩しているとガスが抜けました。信じる者は救われますね。

いい景色に疲れもどこかに消え去り、ただただ充実感に浸る幸福の時間。

 

 

白馬岳山頂の富山側(山荘から見て左側)はなだらかな斜面ですが、長野側(山荘から見て右側)は写真の通りストンと切れ落ちていてすごい高度感です。覗き込むと股がスースーします。

 

 

こちらは山頂北側、三国境や小蓮華岳白馬大池方面です。

「次に白馬岳に登る時は栂池から白馬大池経由で登るのもありだなー」なんてことを考えています。

 

 

一応、登頂したら三角点タッチもしています。(誰得情報)

 

 

こちらは雪倉岳かな。いい稜線に目がない私としては雪倉~朝日も歩いてみたいところです。アクセスが悪いのが難点ですが、何とか工夫して実現させたいものです。

 

 

 

ワールドクラス(白馬岳山頂→白馬山荘※1/3日目)

 

山頂での景色をゆっくり堪能できたので、そろそろ山荘でビールタイムと行きましょう。

来た時よりも晴れているように見えるのは、ビールが近づいてきているからでしょうか。(違います。ガスが抜けただけです。)

 

 

テント場が山荘の奥に見えました。それにしても、1つの山頂に対して山荘と頂上宿舎、山小屋が2つもあるなんて、他の山ではなかなか見ない光景です。それだけ人気の山ということですね。

 

 

山荘の中はこんな感じ。山小屋とは到底思えないほどおしゃれな作りです。

 

 

1杯1,000円。下界の相場と比べるなんてナンセンスなことをしてはいけません。こんな景色の中で生ビールが飲めるんですから、それだけでありがたいことです。

 

 

命の水を飲みながら、ふとあの言葉を思い出しました。

「白馬はワールドクラス」

あの登山用品店の店員さんはどのあたりに世界を感じたのでしょう。私は世界の山は未経験なので想像もつきませんが、緑の柔らかさと岩の荒々しさが融合したこの景色は確かに世界に誇れる風景だと思います。

 

 

先程からビールのつまみとなっている正面の山は手前が杓子岳、奥が白馬鑓ヶ岳です。登頂した白馬岳と合わせて白馬三山と呼ばれています。

明日はあの山々を越えて不帰キレットに臨むことになりますが、キレットに入る前に力尽きそうな気がするのですが、、、。

 

 

私は無事に帰ることができるのでしょうか。

 

 

天空の楽園(白馬山荘→テント場周辺※1/3日目)

 

テント場付近まで下りてきました。

 

 

命の水を飲むまでは旭岳にも登ろうかと思っていたのですが、そんなやる気はもうありません。のんびり過ごします。

 

 

さっきよりテントが増えています。そりゃあそうです、こんなにいい天気ですから。(この後も続々と増えて、最終的にはかなりの数になりました。)

 

 

テント場の裏、明日からの縦走路上にある丸山です。今日の夕日はあそこから見ると綺麗かな。

 

 

旭岳方面から歩いてくる人が。小屋番さん?がはっきりとした目印をつけてくれているので歩きやすそうですね。(書き忘れていましたが、大雪渓・小雪渓ともに目印が付いていました。本当にありがたいです。)

 

 

白馬山荘とその奥の山頂。天空の楽園です。

 

 

青い空と白い雲。「こんな景色を楽しめるんだから、もっとみんな山に来たらいいのに」と思う気持ちと「静かにこの絶景を独り占めしたいからみんな山に来るな」と思う気持ちが交錯します。

 

 

旭岳も惚れ惚れする山容です。

 

 

杓子岳はピークを踏まずにトラバースする道(写真左側)もありますが、折角なのでピークハントするつもり。ただ、白馬鑓ヶ岳のあの登りを見ると少々不安。まあ、頑張りましょう。

 

 

 

夕日に願いを(テント場周辺※1/3日目)

売店の入り口の自販機でビールを調達し、本格的にだらだらタイムに入りますか。

 

 

と思ったら既に丸山に夕日を待つ人の影が。あまりだらだらしていると、いいポジションを確保できなそうです。

(仕方なく)グビグビと喉を鳴らしてビールを飲み干し、私も稜線上に向かいます。

 

 

確かに太陽はだいぶ傾いて、光の色も暖色になってきています。山で一番好きな時間かもしれません。

 

 

YouTubeや雑誌で何度も見た景色ではありますが、やはり自分の目で見るべきですね。生はやはり別格。苦労して、汗をかいて、自分の足で辿り着いたからこその感動があるな、と山に登る度に思います。

 

 

太陽は旭岳の裏に沈むようです。

 

 

この時間になって、再びガスが湧いてきました。幻想的な雰囲気を演出してくれています。

 

 

日陰になると一気に寒さを感じます。夏と言えど、やはり山は下界とは違う環境です。

 

 

寒いのでまだ日が当たっている部分をうろちょろすることにします。

 

 

雪倉岳まではっきり見えます。

 

 

富山側は雲海になっています。

 

 

丸山の南側には大迫力の入道雲。夏だなー。

 

 

夕日もクライマックス。

 

 

山肌が赤く染められて綺麗です。

 

 

神様は信じていないタイプですが、こういう時だけ都合よくお祈り。

「明日も無事でありますように!いい景色を沢山見られますように!」

 

 

お祈りも済んだところで、そろそろテントに戻って、マジックアワーを楽しみながら寝る準備でもしますか。

 

大満足の1日目が終了。明日はいよいよ今回の縦走の核心部です。乞うご期待!

ということでお休みなさい。

 

 

 

縦走スタート(テント場→杓子岳※2/3日目)

3:00 おはようございます。2日目の朝です。

と言っても辺りは暗く、見上げると満天の星が輝いています。

 

 

星の撮影をしながら朝食を済ませ、テントを撤収します。周りの方々もぼちぼち出発の準備を始めています。

パッキング中、朝露で重くなったテントを詰め込みながら「こんな重いザックでキレットを通れるのかな」と不安になってきました。まあ、とりあえず手前まで行ってみて、本当にダメそうなら引き返しますか。

 

 

5:00 パッキングを終え、いよいよ出発です。まずは杓子岳を目指します。

朝日に照らされる白馬岳が美しい。

 

 

昨日、夕日を見た丸山まで来ました。

この時間の旭岳もいいですね。岩肌に光が刺していて、カッコよさが倍増しています。

 

あまり写真ばかり撮っていると時間がなくなりそうなので、程々にして先に進みます。

テント場から杓子岳まではCTで1時間ほど。最後の登りがかなり手強そうです。

 

 

右には立山剱岳が浮いています。去年の苦い経験を思い出しますね。本当にクレイジーな思い出です。

 

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杓子岳までの道のりは、一度下って登り返す形。この重量(約25kg)+昨日の疲れもあって、僅かなアップダウンも気になります。

 

 

ここから見ると、やはり白馬岳の長野側は断崖絶壁ですね。

 

 

杓子岳への最後の登りは、足元がガレていて思うようにスピードが出ません。位置的にはこの下が昨日登ってきた雪渓なので、この石が落石の要因なのかもしれませんね。

 

 

 

三山制覇へ(杓子岳→白馬鑓ヶ岳※2/3日目)

 

5:55 杓子岳(2,812m)無事登頂しました。

最後の急登で今日の分の体力を全て持っていかれた気がします。

山頂は南北に細長く伸びていて、狭くはないけど休憩にはあまり適さないところです。大量の石が積みあがったような場所なので、足元は不安定。気を抜くとバランスを崩しそうです。慎重に白馬鑓を目指します。

 

 

目指す白馬鑓ヶ岳は一度少し下って、大きく登り返します。

またもや体力が消耗しそう。山頂に着いた途端に力尽きなければいいですが、、、。

 

 

と、ここで先行者を発見。初めての場所なので心強いです。

私だけでしょうか。山にいると、誰にも会いたくない気持ちと誰かに会いたい気持ちの両方が強くなります。わがままなんですかね。

 

 

白馬鑓への登りに取りついた辺りで、案の定、疲労感が襲ってきたので、歩いてきた道のりを見て休憩します。

しかし、この景色は多くの人に見てもらいたい絶景ですね。本当に綺麗です。

 

 

今のところ後続者は見つけられていません。前に人がいるのは歩きやすいですが、後ろに人がいるのは急かされているような気がして得意ではないのでありがたいです。

 

 

こうして見ると、目の前の急登を越えると、最後になだらかな登りがあって山頂に至るようです。

 

 

絶景をエネルギーに足を前に出します。

 

 

山頂への分岐です。こちらも杓子岳と同様、山頂に行かずにトラバースする道もあるようですが、大した時短にもならないみたい。登らない選択肢はありません。

 

 

 

迫力の縦走路(白馬鑓ヶ岳→天狗山荘※2/3日目)

 

6:55 白馬鑓ヶ岳(2,903m)無事登頂しました。

山頂は杓子岳よりだいぶ広く、景色も良いので、休憩するのに絶好の場所です。ということで、私も補給タイムを取ることにします。

 

 

歩いてきた稜線。これで白馬三山を繋げました。本当にここまでの行程だけで十分過ぎるくらい満足感があります。

 

 

この高度感。歩いている時はさほど感じませんでしたが、こうして見るとなかなか険しい道であったことが分かります。

 

 

ザックを下ろして休憩できたので、次のチェックポイントである天狗山荘まで歩ける体力くらいは充電できたような気がします。

 

ということでリスタート。白馬鑓からは不安定な石ころの道をだらだらと下っていきます。

 

 

下り終わるとアップダウンがほぼない道です。稜線上のこういう道は大好物。お散歩気分で歩けます。

 

 

白馬鑓温泉への分岐がありました。

もちろん今回はスルーですが、そもそも今は登山道の崩落?か何かで下の猿倉まで抜けることができないらしく、行くことが少し難しくなっているようです。でも、こんな山中で温泉に入れるなんて、夢のような場所ですよね。一度は訪れたいと思います。

 

 

先行の方と話すタイミングがありましたが、この方もキレットに挑むとのこと。

「そんな大きなザックでよくキレットに行きますね。」と言われてしまいました。確かに私もそう思います。次にキレットに行く時はもっと軽量化しようと心に誓いました。

 

 

立山剱岳。今年こそはあの頂まで登りたいです。

そう言えば何故「後立山」と呼ぶんでしょう。と思ってググってみたら「富山側から見た時に立山の後ろに聳えて見れることに由来している」とのこと。どうでもいいですが、何故富山県側からの視点が採用されているんだろう。(本当にどうでもいいです)

 

 

振り返ると白馬鑓が鎮座しています。北側から見た時よりどっしりとした印象です。

 

 

平坦で景色のいい散歩道を進んでいくと、あっという間にこの標識が。間もなく山荘のようです。

 

 

山荘手前に雪渓がありますが、傾斜もきつくないので心配はなさそうです。

 

 

 

核心へ向かう(天狗山荘→天狗ノ大下り※2/3日目)

 

7:45 天狗山荘に到着。先ほど休憩したばかりなので今回は通過しますが、白馬山荘よりも静かで、個人的にはこっちが好みかなー。(ここに辿り着くまで大変だけど)

是非とも一度テント泊してみたいです。

 

 

水場も近くて快適そう。

 

 

天狗山荘を通過してすぐ、天狗の頭に着きました。

ということは、ここから天狗の大下りが始まって、いよいよキレットですか。

 

 

と思いましたが、先を見ると、もう少し快適な散歩を楽しむ時間はもらえそうです。

奥に見えるのが唐松岳五竜まで行きたいけど、キレットを越えた時の残りの体力ゲージ次第かな。(多分、無理でしょう)

 

 

いい稜線です。

 

 

GPSを確認すると、目の前の小ピークを巻いた裏あたりから天狗の大下りが始まるようです。

 

 

剱岳よ、私が落ちないように見守っていてくれたまえ。

 

 

どーん。これがキレットですか。やはり結構きつそうです。

 

 

 

ダダ下り(天狗ノ大下り→不帰キレット※2/3日目

 

8:35 天狗の大下りの起点に到着。まずはここから300mほど一気に標高を下げます。勿体ないですが、この気持ちは山歩きの常。仕方がありません。

ヘルメットを着用し、顎紐と気持ちを引き締めてスタートです。

 

 

大下りは基本的にずっと不安定な岩や石の上を下っていきますが、特に急な場所には鎖が設置されています。慎重に進もうと足元をよく見てみると、その足の奥にある股間がスースーする景色が目に入り、緊張感を高めてくれます。(手を使って下りていく箇所が多く、なかなか足元の写真が撮れませんでした。)

 

 

鎖場は下り始めてすぐに多く出てきましたが、そこを抜けると写真のようにガレた急な下り坂を歩きます。写真中央のコルまでもう少し頑張ります。

 

 

それにしてもコルから先のキレット、これ道あるのかな?

ここからではどこがルートになるのか識別できません。稜線上だとしたら左側は断崖絶壁です。

 

 

キレットの急峻さに不安感を煽られながら、コルに到着です。

 

 

 

重い・険しい・疲れた(不帰キレット①※2/3日目)

 

9:30 コルで少し休憩した後、キレットに入ります。ルートは稜線上ではなく、富山側の斜面に走っており、急ではありますが三点支持を意識すれば特に問題なく歩けます。

 

不帰キレットは白馬側から行くと、一峰、二峰北峰、二峰南峰、三峰の順に越えていきます。核心部は二峰北峰への登りのようです。CTは約3時間。長いと感じるか、短いと感じるか、後者であってほしいと願いながら歩きましょう。

 

写真はさっき下りてきた天狗の大下り。ここを登りで使うのはなかなか骨が折れそうなので、キレットに再訪するとしても今回と同じ白馬側からを選びそうです。(再訪のことはまず今回無事に通過してからにしろ)

 

 

コルから出発した直後の「ほぼ垂直なのでは?」という岩登りを終えると斜度は落ち着き、奥に見えるレベルが一段階上の岩山を目指して進んでいきます。あれが二峰北峰、キレットの核心部。さすがに楽ではなさそう。

 

 

9:50 とりあえず一峰(2,520m)に登頂。キレットはまだまだ序盤。むしろここからが本番のようなので気を抜かないようにします。

うーん、しかしやっぱり荷物が重すぎるな。ちょっとバテてきたかも、、、。

 

 

雲の奥に見える二峰北峰には、一度大きく下ってから登り返します。この荷物では少しのアップダウンですら気になるというのに、メンタルを削られる厳しい状況になってきました。この感覚、山から離れると異様に恋しくなるのに、その最中はそこまでの余裕はなく、楽しいのは間違いありませんが、早く着いてくれという気持ちが大きくなります。

 

 

一峰への登りに取りつく前にも思いましたが、ルートはどこよ。

 

 

と思ったら先行している方がいました。いやいや、ルートとかではなく、ただ岩をよじ登っているだけのように見えるのですが、、、。

 

 

いざ、登り始めると、手足をかける場所が結構あるので、そこまで困ることなく登っていけます。

ただ、なにぶん荷物が重く常に後ろに引っ張られているような感覚なので、気を抜くと後ろに広がる絶景にダイブしてしまいそう。

 

 

要所要所には鎖や杭が打たれているので、その恩恵にあずかればバテバテの私でも何とか標高を上げていけます。

と、こんなところに梯子の橋が。これは事前に山行記録を調べていた時にみなさんが写真を撮っていたので知っています。東京タワーなどにあるガラス張りの床よりもスリルを楽しみたい方におすすめです。

 

 

こちらも事前に調べていた時に見つけた挟まっている岩。今は丁度良く上手い具合に挟まっていますが、地震か何かの拍子に外れたら、とんでもない大きさの落石(落岩?)となりますね。考えただけでもゾッとします。

 

 

 

自分のペース(不帰キレット②※2/3日目)

 

10:50 二峰北峰(2,581m)に登頂。核心部を乗り越えました。

岩登りの難易度もさることながら、ただただ私の体力不足or補給不足によるバテが影響し、予定よりも時間がかかってしまっています。ただ、ここで焦ってもいいことはなさそうなので、落ち着いてこれが自分のペースだと受け入れるしかありません。

 

 

右の山が二峰南峰です。傾斜はここまでの行程と比べたらいくらか易しく見えます。

 

 

一度削られた体力を歩きながら回復させるのは難しく、こんな何でもない道でもヒーヒー言いながら歩きます。

 

 

だいぶキレットの終点である唐松岳に近づいてきたので、八方尾根がよく見えるようになってきました。

 

 

八方池も確認できます。夏の八方尾根も歩いてみたいなー。

 

 

11:10 二峰南峰(2,614m)に登頂。

よし、もう無理。ザック下ろします!唐松岳まで我慢できず、ここで一度天使タイム(私が勝手にそう呼んでいる「重いザックを長時間背負って疲労した後、ザックを下ろした瞬間に訪れるあの空に飛んでいけそうなほど体が軽くなる時間」のこと)に入ります。

 

天使となり、行動食を多めに食べ、少しは体力ゲージが回復したはず。キレットも終盤です。もうひと踏ん張り、頑張ります。

 

 

振り返ると、左奥に見える天狗の大下りからここまでの険しい道が目に入ります。

いやー、おれ頑張ってるよ。こんなすごい道を歩いているんだもん。(バテてるけど)

 

 

ここで久しぶりに立山剱岳を見ました。位置関係的にずっと見えていたはずですが、見る余裕がなかったということですね。

でもここまで無事に到達できているので、天狗の大下りに入る前に剱に向かって安全祈願をした甲斐がありました。

 

 

三峰は手前の岩の塊のような見た目のあれですね。どうやらピークは踏まずにスルーするルートとなっているようです。

そして奥に見える唐松岳に登ればキレット終了。もうちょい。

 

 

三峰をスルーしながら唐松岳(写真右上)に近づいていくと、その肩から山荘のような建物が見えました。ゴールが近い。

 

 

唐松岳への最後の登り。自分の体力のなさに日頃のトレーニング不足(&荷物の多さ)を反省しました。

ただ、何だかんだ言って、こんな私でもキレット通過できました。この景色の遥か奥から自分の足で歩けました。すごく達成感があります。たぶん今、私の脳内では幸せホルモンがドバドバ出ています。

 

 

 

自己肯定感(唐松岳→頂上山荘※2/3日目)

 

12:25 唐松岳(2,696.4m)無事登頂しました。やったー。

1年半ぶり2回目の登頂です。目標のとおり、キレットを越えて登頂することができました。

 

 

キレットでは数人の人に会っただけでしたが、やはり唐松岳山頂は大盛況。多くの登山者が記念撮影や食事を楽しんでいました。やはり八方尾根は春夏秋冬1年中大人気のようです。

 

 

自分が歩いてきた道のりを辿って1人でニヤニヤしているヤバい人。私のことです。

でもこの時間が縦走の醍醐味みたいなところあるじゃないですか。だって奥の白馬鑓ヶ岳の更に奥から歩いてきたんですよ、自分を褒めたいじゃないですか。

怪しいと思ってもそっとしておいてください、、、。

 

 

こちらは五竜岳。冬に見た時も同じ印象でしたが、迫力がすごいです。

「行けたら今日中に五竜まで」なんて思っていましたが、私の体力と荷物では難しかったです。潔く諦めて今日は唐松のテント場をゴール地点とします。五竜君、明日行くから待っててね。

 

 

 

山頂でもう少しゆっくりしたかったですが、続々と到着する八方尾根組の方々に圧倒され、追い出されるように山荘方面に下りました。

 

 

この景色も、雪がついていない時に見るのは初めてです。緑もいいですね。

 

 

この写真だけで、多くの方が登っているのが伝わると思います。

 

 

テント場は山荘から少し下った位置にあり、テントから白馬方面を望むことはできません。また、山荘まで登ってくればいいのですが、とりあえずこれでもかというくらい目に焼き付けておきます。

縦走を終えその道のりを振り返ることが、この世で自己肯定感を高める最も効果的な方法だと私は思います。

 

 

テント場は白馬岳頂上宿舎テント場と同様、事前予約制。(こちらもコロナ禍だから?)あまりに疲れたので八方尾根で下山しようかと一瞬思いましたが、折角北アルプスまで遥々来たのに勿体ないという当然の結論に至り、受付を済ませました。(2,500円)

 

 

 

夏の夕は雨に注意(頂上山荘①※2/3日目)

 

山荘の自販機でコーラ(350ml400円)とアクエリアス(500ml500円)を購入し、コーラは小屋でグビグビっと一気飲み。

山でこれが飲める幸せ。文明と自然の共存とはこのことですね。(違う)

 

 

テントは1人の時間をゆっくり楽しみたかったので、1張分しかスペースがないようなスペースに張りました。

 

 

これで剱岳を独り占めしている気分に浸れます。

 

 

唐松岳のテント場から下っていくと(西に進むと)欅平まで行けるようです。(写真右手から奥に向かって伸びる道)

欅平と聞くと思い出すのが「下ノ廊下」。あそこもなかなかスリリングな山歩きを楽しめるようなので、近いうちに歩いてみたいですね。

 

 

テントから明日の目的地である五竜も見られます。

明日は五竜までは最低限、体力が残っていればキレット小屋で宿泊し、翌日八峰キレットに挑みたいというやや無謀な計画を企てています。(五竜で力尽きれば遠見尾根で下山します。)

 

 

テント場には花々が咲いていて、詳しい方はただ体を休めるだけでなく、メンタル面においても心安らぐ良い時間を過ごせそうです。

 

 

因みにテント場は山荘から50mほど下に位置しており、山荘までビールを買いに行こうと思っても、少し意気込まないと気持ちの弱い私は辿り着けずに遭難してしまいそうです。

 

 

唐松岳は日帰り登山者がメインなので、午後になると人が一気に減って静かな山に変わりました。

 

 

山荘の自販機からビール(700円)と水(1.5L300円×2※煮沸消毒必須)を購入してきました。

 

 

僅かに入る電波で天気予報を確認すると、この後雨雲がかかるようです。あとはテントから出ません。

 

 

先程の写真で作っていた食事を済ませたあたりで予報通り雨に降られました。しかも結構本降りで、トイレに行きたい私はただただモジモジしながら耐えました。

 

 

雨が上がった頃には、辺りはすっかり夕方の雰囲気に変わり、山頂からは人の姿は消えていました。

 

あ、そんなこと言ってる場合じゃない、トイレ行くんだった。

 

 

唐松岳から見た剱岳が私にとって初めて自分の目で見た剱岳なので、世間一般的に皆さんが思う剱岳は剣沢からのあの有名な景色だと思いますが、私としてここからの景色が一番しっくりきます。

 

 

日も傾いてきたので、明日に備えてそろそろお休みタイムですね。

 

 

明日は五竜に向けて歩きますが、山荘を過ぎてすぐの「牛首」というポイントはキレット並みの危険度だという話も聞くので、今日までと変わらず慎重に進みたいと思います。

 

今回最大の目的だった不帰キレットを無事に通過し、自己肯定感に包まれたところで2日目が終了。明日もいい景色と巡り会えますように!

ということでお休みなさい。

 

 

 

あんなところまで(頂上山荘②※3/3日目)

4:00 おはようございます。3日目の朝です。

空は薄っすら雲がありますが、予報は快晴。立山・剱も見えています。これから晴れ渡っていくことを信じて、アルファ米を腹の中に流し込みました。

 

 

写真では写せませんでしたが、ヘッドライトを着けた何名かが唐松の山頂にいるようです。御来光にはまだ少し早いような気がしますが、、、。

 

 

今日の目的地である五竜。なんか昨日より遠く感じるなー、気持ちの問題でしょうが。

 

 

昨日の雨と夜露が付いたテントを撤収します。これは仕方がないことですが、テントって濡れると撤収の手間が倍増しますよね。

 

 

テントを撤収し終えたタイミングで五竜に日が当たり始めました。圧倒的な存在感です。

 

 

この重いザックを背負って、あんなに遠いところまで歩くのか。

不安もありますが、自分に残っている体力を信じて歩くしかありません。

 

 

テントを張った場所から山荘前まで登ってきましたが、既に疲労を感じます。2日間ともぐっすり寝られてはいますが、3日目ともなると回復しきれないものなのでしょうか。

 

 

だからと言って、ここで八方尾根から下山するという選択肢は私にはなく、唐松岳とその奥に見える不帰の嶮に別れを告げて出発することにします。

 

 

 

キレット並み(頂上山荘→牛首※3/3日目)

 

6:15 3日目のスタート。まずは牛首と呼ばれる危険区間を通過しなければいけません。

 

 

ほう、既に危険な香りがするぜ。

 

 

小高い場所からは不帰キレットの奥に白馬三山(杓子岳は見えていない?)まで見えました。昨日の自分に励まされ、前に進みます。

 

 

牛首(勉強不足でどこが牛首なのか分かっていませんが、、、)の序盤は右側(西側)が切れ落ちたガレ場です。

 

 

少し進むと五竜の全容を拝める場所に出ました。近づけば近づくほど圧倒的な迫力は増してきます。

数時間後にはあの頂に立っている(はず)と考えると、人間の足は偉大です。

 

 

スタート直後は「牛首なんて、どこがキレットと同等の危険度なんだ」なんて舐めた感想をもっていましたが、そんな気持ちはあっという間に改めさせられました。

足場がかなり不安定で、足の置き場は靴1つ分あるかどうかという場所が続きます。急に緊張感が出てきて、そのおかげで少し残っていた眠気が一気に吹き飛びました。

 

 

結局ゆっくり写真を撮ることができず、気付いた時には牛首は通過してしまっていました。

写真は振り返って見た牛首。左は唐松岳山頂。間違いなく唐松岳山頂よりは難易度が高いので、行かれる方は御注意ください。

 

 

牛首を抜けた後も険しい道は続くようです。一度、一気に下り、多少のアップダウンを繰り返しながら五竜まで標高を取り返していきます。

 

 

こちらは遠見尾根。五竜で力尽きた場合(ほぼ間違いなく力尽くでしょう)、下山で使用する予定です。急ではなさそうですが、その分時間はかかりそうな印象です。

 

 

 

憧れに迫る(牛首→五竜山荘※3/3日目)

 

かなり下ってきました。

「折角さっきまで高いところにいたのに。」何回味わっても勿体ない気持ちになりますよね。

 

 

最低鞍部付近に「大黒岳」の表示板がありました。どうやらピークは立ち入り禁止のため、ルート上に表示があるみたい。

 

 

剱岳との距離も、初日や昨日と比べるとだいぶ近いです。見えているのは何尾根なんでしょう。長次郎尾根かな?

 

 

五竜もさっきよりだいぶ近くなりました。道もさっきまでの険しいものから変わり、気持ちのいい広い稜線です。

道は良くなったのに、ザックの重さのせいでしょうか、肩の肉が痛くなってきました。確かに3日間、ザックが肩に食い込みまくっていますから無理もありません。

もう少しで五竜山荘のはずなので、とりあえずそこまで頑張りましょう。

 

 

振り返るとどれだけ牛首が険しかったかが分かりました。手前が牛首(奥が唐松岳)ですが、頂上付近の岩稜エリアは見た目も体感も確かにキレット級です。

 

 

目指す五竜も山頂付近は険しい岩稜が続きそう。気を引き締めなければ。

 

 

この辺りで自分の残りの体力と時間から、このまま八峰キレットを目指すのは危険だと判断しました。

あ、ということは五竜山荘でザックをデポし、空身で山頂アタックできますね。よし、これでおれは無敵になれる。

 

 

ということで、この先の予定を確定させたところでそろそろ山荘に着きそうです。GPSを確認すると、写真左の人がいるところ辺りまで行けば見えるみたい。

 

 

縦走路と遠見尾根の丁字路は「白岳」という山のようです。

 

 

白岳から見る五竜岳。一度少し下ると山荘なので、そこでザックをデポって山頂に向かいます。山荘⇔山頂はCTで往復2時間。

 

 

疲れてきているので、歩いてきた稜線を振り返って充電します。蘇る山への気持ちと漲る自己肯定感。

 

 

こうして見ると牛首の頂上付近は五竜山頂付近に引けを取らない険しさです。初心者でも登れる唐松岳が余計に可愛く見える。

 

 

 

ラストアタック(五竜山荘→五竜岳※3/3日目)

 

8:00 五竜山荘に到着。小屋前で風に吹かれていた小屋番さんに断ってザックをデポさせてもらい、空身で山頂に向かいます。

八峰キレットに向かわないことを決めたので、このアタックが今回の縦走最後のピークハントとなります。最後にケガをしないように注意します。(ヘルメット着用済み)

 

 

序盤はそこまで急峻ではありません。

が、登り始めると山頂が遠くに感じる不思議。

 

 

初日からの縦走路が見えます。へっぽこ登山者の私ですが、ちょっと頑張ればこれだけ歩けました。

それにしても後立山、いいところです。はまっちゃいそう。

 

 

先程までいた山荘。小屋の前のベンチに人影が集っているのが確認できます。

ここのテント場は混むのかな?遠見尾根を登ってここでテン泊もありですね。

 

 

歩きやすい行程はここまで。ここからは最後の岩登りが始まります。

 

 

徐々に増していく高度感にワクワクしながら歩を進めます。

 

 

歩いてきた縦走路の名だたる峰々が背中を押してくれます。(ここに来て一番初めに登った白馬岳(一番奥)が見えて嬉しい)

 

 

ゴロゴロとした岩をよじ登って進みます。中には不安定な岩もあるので気は抜けません。

緊張感はありますが、この青空の中で山に登れる幸せを感じられる良い時間です。

 

 

岩登りも終盤を迎え、五竜の裏から素晴らしい縦走路と、その奥の鹿島槍ヶ岳がお目見えです。ということは鹿島槍ヶ岳の直下が八峰キレットですね。

今回は諦めましたが、この景色を見ると予定変更したくなります。

 

 

鹿島槍ヶ岳と八峰キレットに気を惹かれますが、注意力が散漫になってはいけません。眺めるのは五竜に登頂してからにしてラストスパートです。

 

 

五竜岳の山頂は縦走路から若干西に外れています。

 

 

ここからは縦走路から外れてピークに向かいます。

 

 

縦走路からはほぼ平行移動。不安定な足場に注意しながら歩けば問題はありません。

 

 

 

宿題(五竜岳※3/3日目)

 

9:00 五竜岳(2,814m)無事登頂しました。

立山はほぼ初めて(今回の縦走までは冬の唐松岳のみ)の私ですが、「後立山と言えば五竜」と答えるほど登ってみたかった山です。

そう言えば、縦走スタート前日に駐車場で話したタクシーのおじちゃんも「後立山で一番おすすめするのは五竜。兄ちゃんもその荷物と行程からして、八峰キレットまで行けるかは分からないが、五竜までは頑張った方がいいぞ。」と言っていました。

おじちゃん、言われたこと守りましたよ!

 

 

諦めたこの先の縦走路。苦渋の決断でした。

でも、行きたい山を一気に踏破するのもいいですが、ここで下りれば宿題ができるので、また来る口実ができます。

 

 

絵に描いたような双耳峰。奥には薄っすらと槍ヶ岳も見えています。(鹿島槍と合わせて三本槍?)

というか、こっちから歩くと鹿島槍への最後の登り、半端ではないですね。もはや壁なのでは、、、。

 

 

八峰キレットに行くとしたら宿泊していたキレット小屋まではここからCTで4:10。

ん?あれ?時間的には全然いける?

でもそのためにはザックを取りに五竜山荘まで取りに帰り、またここまで戻ってきて、プラス4時間登らなければいけません。うーん、これは判断ミスですね。行けました、はい。でももう無理です、はい。

今となってはあとの祭りなので、キレットおかわり縦走はまたの機会にします。

 

 

3日目も綺麗に立山・剱が見えています。

昨日の夕方のみ雨に降られましたが、3日間とも天気に恵まれて本当に良かったです。

 

 

 

そろそろ下山(五竜岳五竜山荘※3/3日目)

 

稜線に雲がかかってきました。もう白馬はおろか、唐松も見えません。

 

 

夏山はすぐに雲が湧くので長居は危険、と色々なメディアで読んだ気がするのでそろそろ下山します。

 

 

鹿島槍方面から来た方に話を聞くと、結構長丁場とのこと。それを聞けたので自分の決断が正しかったと思えました。ここで変に「全然余裕で行けますよ」なんて言葉を聞いていたら、後悔で帰っても寝られなかったと思います。

 

 

それでは下山します。剱岳よ、3日間見守ってくれてありがとう。また来るよ。(というか次は君に登らせてくれ。)

 

 

 

ヘリと山(五竜山荘→西遠見山※3/3日目)

 

10:20 五竜山荘に帰ってきました。ここでデポさせてもらった荷物を回収し、パッキングし直します。

遠見尾根は下山でも4時間くらいかかるみたいなので、もう少し旅は続きます。

 

 

パッキング中、西側からヘリが飛んできました。どこかの山小屋に行ってきたのか、救助者を搬送しているのか。(荷揚げ用の網をぶら下げていないので救助?)

現代登山にとって、ヘリは欠かすことができない要素になっています。それがいいことなのか、悪いことなのか、これは意見が割れるところではありますが、個人的には山小屋で生ビールが飲める今の環境がすごく好きです。ただ、それを維持していくことに莫大な費用と膨大な労力がかけられていることを思うと、「自分で使うもの・食べるものは自分で背負って登る」というスタイルの登山に回帰すべきなのかと思うこともあります。

 

現代登山には、登山道整備や救助活動等で山小屋に負担がかかりすぎている点など、ヘリの他にも問題が山積している状況です。山小屋や山岳会、ボランティアだけでなく、行政がもっと積極的に山の維持管理に参画していくべきだと思います。(最近、そのような内容の本を何冊か読んだためか、以前より山が抱える問題に興味が出てきました。)

 

 

10:45 五竜山荘を後にして、遠見尾根を下ります。

 

 

さらば五竜岳。次来るのは八峰キレットに挑む時かな。

 

 

遠見尾根の頂上である白岳に登頂。一瞬雲がかかったタイミングで山頂に着いたので、展望はゼロ。

スタートしたばかりなので、ここは先に進みます。

 

 

さっき山荘上空を通過していったヘリが荷物をもって戻ってきました。

 

 

今度は五竜山荘への荷揚げのようです。

もう少し山荘でゆっくりすればヘリを間近に見られたのに。少し残念。

 

 

遠見尾根の印象としては、手を使って登るような場所はないものの、全体的に急登だと感じました。今回は下山で使用していますが、これが登りだったら結構本腰を入れて歩かないと時間がかかりそうです。

 

 

鹿島槍猫耳に雲がかかっています。

 

 

と思ったら、私がいるあたりでも雲が湧いてきました。景色を楽しみたいので、白の世界には入りたくありません。

 

 

何回見ても鹿島槍への登りは厳しそう。

「行くなら扇沢から入って、爺ヶ岳経由の方がいい」

私の心の弱い部分がそんな提案をしてきます。八峰キレット五竜側からと鹿島槍側からでどっちから入るのがおすすめなんでしょうか。

 

 

融雪水が滝を形成しています。

 

 

確かに五竜山荘にいた時と比べて気温がかなり高いような気がします。木々も増えてきて風も通りにくいです。熱中症に気を付けなければ。

 

 

 

時間に追われる(西遠見山→小遠見山※3/3日目)

 

11:30 西遠見山に到着。といってもピーク感はなく、遠見尾根のチェックポイントの1つといったところ。

 

 

左(北側)を見るとお隣の八方尾根が見えます。

 

 

あの建物は八方池山荘でしょうか。

 

 

12:40 中遠見山に到着。

あれ?てことは大遠見山は見逃してしまったということですね。

 

 

ここまで下ってくると鹿島槍が双耳峰に見えなくなりました。

 

 

13:05 駆け足で小遠見山に到着。

少し急いでいるのは帰りの電車の関係。アルプス平駅から下までロープウェイで下りた後、神城駅まで移動して白馬駅まで戻る予定なのですが、確か15:40発とかの電車を逃すとその後の電車が17時を過ぎるようで、下山後そのまま山形に帰る私としてはちときつい。何とか電車に間に合うように頑張っています。

 

 

 

整備された道を下る(小遠見山→アルプス平駅※3/3日目)

 

五竜鹿島槍は小遠見からで見納めかな。

鹿島槍と八峰キレット、宿題もできたことですし、また来なければいけませんね。

 

 

小遠見山からは本格的に樹林帯に入るようです。

下界も近づいてきたのでもうひと踏ん張り。

 

 

ここで槍ヶ岳をまた拝むことができました。これだけ離れていても一目でそれと分かる山容、さすがですね。

槍も2019年の表銀座縦走で行ったっきりなので、来年あたり再訪したいものです。

 

 

ここで神城駅まで6.2kmもあることが判明。

まだ登山道なので街中の駅までの距離が書いているとは。私と同じ行程の方が沢山いらっしゃるということでしょうか。

 

 

整備されている道をリズムよく下りてきました。

小遠見山まではハイキングの方も多いためか、木道や階段などの設備が整っていて安心して歩けました。

 

 

これ、山で写真撮っている人多いですよね。真似して撮ってみたものの名前が分からない、、、。(下山後調べました。「コマクサ」ですね。これが高山植物の女王か。)

 

 

やっと着きました。久しぶりに文明のにおいを感じます。

 

 

 

涙のソフトクリーム(アルプス平駅→神城駅→白馬駅→八方バスターミナル※3/3日目)

 

14:15 アルプス平に到着。

パフォーマーの方が楽器を演奏しており、疲れた心身に音色が沁みます。おかげで下界に戻ってきたことを実感できました。

 

 

ロープウェイの駅の建物内の軽食コーナーで、ビールと共に私が山で常に欲しているソフトクリーム(500円)にやっとありつけました。美味い!

電車の時間までそこまで余裕があるわけではありませんが、これをスルーしてロープウェイに乗り込むことなんて、私にはできません。

久しぶりに食べる癒やしの味に何故だか無性に感動してしまい、1人で溢れ出てこようとする涙を堪えながら食べました。

 

 

ロープウェイは1,500円。

さっきまで自分の足を労わっていましたが、その何倍ものスピードで進んでいく乗り物に乗っているいます。複雑な気持ちです。

 

 

3日間、私を苦しめ続けた重すぎるザック。ソフトクリームを食べながらザックの中を漁ったため、形は崩れ、めちゃめちゃな形になっています。

暫くは背負いたくないなー。(まだ自分の車まで背負わなければいけないわけですが、、、。)

 

 

とう!ロープウェイから神城駅のホームにワープ!したわけではなく、ロープウェイを下りてから迫る電車の時間に焦りながら、神城駅まで走ってきました。

え?タクシーを使えばよかったのにだって?私の中ではタクシーは金持ちの乗り物という位置づけなので、そんな選択肢は頭の片隅にもありませんでした。

 

 

神城駅から白馬駅まで190円で移動し、駅から車があるバスターミナルまでも180円で文明の利器を使いました。予定では駅からバスターミナルまで歩く予定でしたが、一度文明の便利さを味わってしまったらもう抜け出せません。

 

 

 

痩せて太る(八方→山形※3.5~4/3日目)

 

自分の車に戻ってきたので、荷物を整理して温泉に入ります。(800円)

日焼けが酷く、あまりの痛みに顔の皮がはがれたかと思いました。因みに、体中の浮腫みがとれたのか何なのかわかりませんが、入山前より7kg痩せていました、、、。

 

 

温泉で4日ぶりに綺麗な体になったので、あとは帰路につきます。

ありがとう、後立山。いい山域だということが分かったので、必ずまた戻ってきたいと思います。

 

 

往路と同様、ダラダラ気ままにドライブしながら帰りました。

 

 

夜中に家に到着しましたが、その日は片づける余力はなくそのまま力尽いたので、翌朝せっせと道具の片付けや手入れをしました。

因みに温泉で7kg痩せたことが判明しましたが、帰りの車で暴飲暴食をしたら7kg太ったので元通りです。

 

 

 

まとめ

今回の縦走では後立山の魅力を思う存分感じることができました。槍・穂高・剱もいいですが、アルプスには他にもそれらに勝るとも劣らない素晴らしい場所が沢山あることに気付けたので、これからも色々な場所を訪れて、いい景色と出会えれば嬉しいです。

 

また、今回行けなかった鹿島槍ヶ岳と八峰キレットは来年必ず挑戦しに行きたいと思います。

 

ではでは、また山に行ったら更新します。

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
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